瑛子さんの大連ってどんなとこ

 大連に住むリケジョの瑛子さん。経済発展著しい大連の街の様子を冷静な観察眼で描くレポートと写真から無限のビジネスチャンスが見える。

病院に行かない、行けない


私の実家がある故郷での話です。90歳のおじいさんの世話をみているおばさんがストレスのために免疫力が低下し、ここ半年よく熱を出すようになりました。

このおばさんは、ご夫妻ともお医者さま(外科)だったにもかかわらず、病院へ行かず、そのつど適当に薬を飲んで熱を下げ、かたや、そのうちだんだん効いてくると言われた、免疫力を高めるという漢方薬を飲み続けてきました。

薬を飲み始めて1ヶ月ほどたったころから、だんだん胃が痛くなりはじめ、とても具合が悪くなってきました。しかし、病院には行かないまま時間が過ぎていくと、なんと、顔色がすごく黄色くなってきてしまいました。誰が見ても、「肝臓の病気ではないか」と言われるまでは、特に治療もせずにほっといていたのですが、さすがにしょうがなく、ついに、病院に行きました。

すると、「肝臓が80%以上壊死している」ということがわかり、あわてて入院しました。実際には、肝炎ではなく、薬の副作用で肝臓がだめになった、との診断でした。治るとしても、半年以上は必要だろう、という、大変な状態になっていたのです。
なんで中国人(大人)は病院へ行かないのでしょうか。

それはたぶん、病院へ行っても丁寧に見てはもらえず、粗末に対応された分、逆にその怒りで病状が悪化する可能性があるから、なのではないでしょうか。

病院はいつも患者で溢れていて、1時間以上待ってやっと診てもらっても、1分間で問診が終わり、ろくに会話もなしに薬を買わせられます。
正直、半分以上は病気に関係のない薬で、病気に対応する薬でも、高い方の薬を指定される、という疑いが強いです。

しかし、こんな状況でも、子どもが病気、というと話は別です。逆に、どうも、ただの風邪らしくても、あわてて病院へ走ってしまうのです。大人の場合とは、まったく対照的なのです。

「万が一、風邪からひどい炎症を引き起こすことになる」のではないか、というような恐れや心配があったり、または、毎回風邪をひくたびに打つ点滴や抗生薬の使用のために、逆に体が弱くなり、本当に入院させなければならない肺炎などになってしまう可能性があるため、神経質になるのもしょうがないこと、なのでもあります。

でも、お医者さんから言わせれば、後ろに長い長い列で待っている患者さんたちに催促されて、余裕を持って一人一人を丁寧に診ることは無理ですし、子どもに対しては、過分に治療をしないと、万が一病状が悪くなると責任重大ですし、神経質な親たちから見ると、明日でも治ってしまう期待があっても、厳重な治療方法を取らないと“お医者さんが尽力していない”と逆に不満になります。

病気で入院しなければならないことになると、まず、“いい病院への入院”ということは、なかなかできません。病室が満杯で、誰かが退院するのを待つしかないのです。急病で、すぐにでも入院が必要な場合でも、まずは廊下に置かれているベッドに臨時入院して、病室が空くのを待つしかありません。

大連は、既に“入院難”で、たまらないと思えば、北京にいる人の話だと、「大連はまだいい方ですよ」というのです。というのは、北京・上海などの診断・治療レベルは、大連より高いため、医療保険が使えなくても、地元で確かな治療を受けられない(疑い)患者さんたちが、全国から北京・上海へ押しかけて来てしまい、地元の病気の人たちにとっては、全国からの病人の人たちと医療資源をシェアするしかない状態なのだそうです。

異文化交流のためのプログラム企画キーワード:
健康と病気、病院、入院、受診体制、医者と患者